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心不全って何? 知って得する医学知識⑥
心不全って何?
心不全とは、一般的には「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」と定義されています。心不全学会より
心臓は血液を全身に送るポンプの役割をしていますが、その機能に障害が起きた結果、血液の停滞が起こり、肺がうっ血し、水浸しになったり、足がむくむ病気です。心不全の原因は、心筋梗塞、狭心症、弁膜症、不整脈、拡張型心筋症など様々な原因で引き起こされます。心不全の症状は、息切れや、動悸、呼吸困難感、むくみなどが目立つようになります。心不全は高齢化が進む日本においては年々発症者が増えている病気であり、今後も患者数が増加することが予想されています。心不全は一度症状がでるとその後、増悪寛解を繰り返し、悪くなっていく疾患です。まず、心不全の原因を作らないようにすること、心不全を早期に発見し、治療することが重要です。早期の診断を得るためには、BNPという採血項目で、心不全の疑いがあるか調べることができます。BNP35以上で異常です。採血ができる医療機関であればどこでも調べることができます。35以上の時には、循環器内科専門医の先生に心エコー検査で調べてもらい診断します。
知って得する医学知識⑤ 長生きできるスポーツって?
長生きできるスポーツって何だと思いますか?正解はテニスです!
デンマークで8577人を最長25年間追跡した研究があります。余暇に楽しむスポーツと全死亡の関連について調べています。運動しない群に比べてテニスを余暇に行う群は平均で9.7年寿命が長かったことが報告されています。その他、バトミントンが6.2年、サッカーが4.7年、サイクリングが3.7年、水泳3.4年、ジョギング3.2年、ジムでの活動で1.5年でした(下記表をご参照ください)。寿命を延ばすためには、少し強度がある、間欠的な運動が効果的であり、また社会的な交流がある運動が効果的であると報告されています。どれくらいの時間するのがよいかといいますと、余暇にスポーツを楽しむ時間と死亡リスクとの関連が評価されており、1週間に2.6~4.5時間のスポーツが、最も死亡のリスクが低かったことが報告されています。元気なうちにテニスをはじめましょう!私はテニスはしたことがなかったですが、ラケット買いました!どこかでやっているので見つけてください!
Mayo Clin Proc.2018 Dec;93(12):1775-1785 Various Leisure-Time Physical Activities Associated With Widely Divergent Life Expectancies: The Copenhagen City Heart Study
知って得する医学知識④ ショートスリーパーは週末の寝だめがよい!
最適な睡眠時間は何時間でしょうか?7時間ほどがよいと言われております。最近では多すぎても少なすぎても、死亡率が上昇することが報告されています。また以前から寝だめは意味がないと言われてきましたが、最近の研究ではそうとも言えないようです。今回ご案内する論文は、中国の南京医科大学の研究グループから報告されており、20歳以上の3400例を対象として、週末の寝だめと心血管疾患の関連を検討しています。その結果、平日平均6時間未満の睡眠時間の方で、週末に平日より2時間以上多く寝だめを行うと、心血管疾患(脳卒中、心筋梗塞、心不全)のリスクが低下したと報告されています。
この結果でいえることは、平日睡眠時間が6時間未満で週末寝だめしていない方と、週末寝だめした方を比較した場合に、寝だめした人の方が心血管疾患のリスクが低下したということです。決して睡眠時間が平日6時間未満でもよいということではありません。さらに言えば、平日6時間以上寝ている方は週末寝だめをしても心血管疾患のリスクは低下しません。一番良いのは平日でもしっかり寝る(7時間程)ということですね。平日睡眠時間がとれないよーとう人は、週末に2時間多く睡眠時間を確保できるといいですね!
引用文献:Zhu H, et al.Sleep Health.2023 Nov 23.
知って得する医学知識③ 1日何歩が長寿なの?
1日1万歩を目指しましょう!なんてよく聞きますよね。ほんとにそれでいいの?1万歩歩いたら本当にいいの?よくわからない。そんな疑問に答えるような論文がオランダから報告されています。12の研究をまとめて、11万人の成人のデータから歩数と死亡、心血管疾患(心筋梗塞ないしは脳卒中)の発症について関連を調べています。グラフをみてみましょう。
死亡の危険性が減る至適な1日の歩数は8763歩(左グラフ)。心筋梗塞や脳卒中の危険性が減る至適な1日歩数は7126歩(右グラフ)になっています。あながち1日1万歩というのはそんなに間違っていなかったですね。また至適歩数を大幅に超えていっても、そんなに死亡や脳血管疾患の危険性が下がるわけではないといった結果です。
そんなに歩けないわよ。家の中を動き回るくらいしかしてないわよ。といった方にも、目標をもってもらうためのデータとして、1日2000歩に比べて、2600歩で死亡のリスクは低下し、2800歩で心血管疾患のリスクは低下することが報告されています。まずは3000歩を目指してみませんか!以上より、動ける人は1日8800歩以上を目指しましょう!あんまり動けないわ!って方もなんとか3000歩を目標に動いてみてはどうでしょうか?
知って得する医学知識② 高血圧について
都市伝説
・血圧は少し高いくらいが元気がでる。低いとしんどい。
・血圧の薬ははじめると辞めることができない。
このような話があるかと思います。間違いではありますが、間違っていない部分もあるので注意が必要です。ひとつずつご説明します。血圧は高いとどうなるでしょうか?ほとんどの方は血圧があがっていても症状はでません。収縮期血圧(上の血圧)が180㎜Hg以上にならないと頭痛やほてりなどの症状はあまりでてきません。なので、血圧が少々高くてもなんともないわけです。ただ統計ではどうでしょうか?下の図を見てください。年代別の血圧120/80未満の人に比べて、何倍、脳心血管疾患(脳卒中、心筋梗塞)で死亡する危険性が高くなるか、それぞれの血圧値の幅で報告されています。
その結果、血圧が高い人ほど、脳卒中(脳梗塞、脳出血)、心筋梗塞で死亡する危険性が高くなることが7万人の日本人データで報告されています。同様に、認知症については、血圧160の人は120の人と比べると10倍認知症(血管性)の発症危険性が高いことが報告されています。ここで注意が必要なのは、高齢者の場合に、収縮期血圧120未満になるとふらつきなどの低血圧症状がでることがあることです。以上より適正な血圧は以下のように推奨されています。75歳以上の方は140/90未満(上の血圧140未満、下の血圧90未満)、75歳未満の方は、130/80未満と定められています。ただ心配性の方は、これ以上の数値がでてしまったときにどうしようとか、何度も測定したりしまうこともあろうかと思います。雨の日があるように、血圧が高い日もあります。平均してどのくらいになるのかを目安にしてください。またはかりなおしても、不安ですから血圧は上がってしまいます。いったん血圧計からは離れて時間を置いて(1時間)再測定するようにしましょう。
次に血圧の薬ははじめると辞めれない。これは難しい問題ですね。血圧の年代別の平均数値をみてみると、30歳台の収縮期血圧の平均は120弱ですが、70歳代の収縮期血圧は140程度と報告されています。これからわかるように、年齢を重ねるだけで血圧は自然に上昇するのです。つまりは加齢による血圧の上昇に打ち勝つ、血圧を下げる努力をしなければ、薬を辞めるに至るのは難しいということです。ではどのように薬以外で血圧を下げれるでしょうか?その方法は、①1日の塩分摂取量を12gから6gに半減させると収縮期血圧は6.8下がります。②カリウム摂取量を1日3900mgにすると、血圧4.2下がります。③体重を1㎏減らすごとに血圧1.1下がります。④毎日40分以上ややきつい歩行を行うと、血圧5下がります。以上報告されています。結構いろいろなことしても、血圧って下がりにくいんだなーと思ったりすることもあります。血圧の薬を辞めれる道もありますので、少しずつ実践してみましょう。ただ腎機能障害の方、糖尿病のある方、脳心血管疾患のある方などは、注意点が異なったりしますので、当院までご相談ください。またガイドラインの改訂により至適血圧は変更となりますので、またご報告いたします。
参考引用文献:日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン