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2025-08-13 19:33:00

心不全についてお話します 知って得する医学知識⑮

まず心不全の患者さんと癌の患者さんはどちらが多いでしょうか?

 

心不全の患者さんは現在120万人おられ、癌の患者さんが100万人ですから、心不全の患者さんが多いかがわかります。また今後心不全患者さんは増加することが推測さ

れており、世に言う心不全パンデミックといわれています。ですので、心不全を予防することが非常に大切になっています。

 

 

 

では心不全ってどのような病気ですか?

 

まず心臓は、全身に血液を送り出すポンプの役割をしています。1分間におよそ70回、1日に約10万回、収縮と拡張を繰り返しています。心不全とは、心臓に何らかの異

常があり、心臓のポンプ機能が低下して、全身の臓器が必要とする血液を十分に送り出せなくなった状態をいいます。心臓のさまざまな病気(心筋梗塞、弁膜症、心筋

症)や高血圧などにより心臓に負担がかかり、心臓は弱ることにより起こる病気です。

 

 

 

心不全の症状ってどのような症状がでますか?

 

心不全になると、心臓から十分な血液を送り出せなくなるため、血液のめぐりが悪くなり酸素や栄養が行きわたらなくなったり、からだに水分や老廃物がたまったりし

ます。その症状としては、息切れ、むくみ、体重増加、呼吸困難があります。まず息切れですが、ちょっと動くだけで息が切れる、すぐ疲れるとか、同年代の人と歩い

ても先にしんどくなるといったものです。次に、むくみ(浮腫)です。これは水分が体内にたまり、足やすねがむくんできます。体重増加についても、水分が体内にた

まり、体重が1週間で2 kg 以上増加することがあったりします。最後に呼吸困難です。処置しきれない血液中の水分が肺にたまり、呼吸が苦しくなったり、仰向けに寝

ると息苦しいなどの症状がでます。

 

 

 

心不全の原因について教えてください

 

心臓に負担がかかる病気が心不全の原因になります。

 

  心筋梗塞、狭心症 心臓を動かすための血管、冠動脈は狭くなったり詰まる病気です。心臓の筋肉に血液がいかなくなり、心臓が弱ります。

 

  高血圧 血圧が高くなることで、血管の抵抗値が高くなり、心臓から血管に血液を送り出すのに、過剰な力が必要になり、結果心臓が弱ります。

 

  不整脈 心房細動など、脈が乱れることにより、心臓のポンプの効率が悪くなり、心臓に負担がかかります。

 

  弁膜症 心臓の中で、開いたり閉じたりする弁がうまく働かなくなり、例えば弁がうまく閉じなくなると、血液が逆流したりして心臓に負担がかかる。

 

 

 

心不全ってどのような経過をたどるのですか?

 

高血圧、糖尿病や慢性腎臓病などの心臓の病気がない時期があり、この病気のコントロールが不十分ですと、その後、狭心症や心筋梗塞、弁膜症などの心臓の病気がで

てきます。ただ症状のない時には、元気に過ごせます。しかし、心不全を発症し、息切れや動悸の症状がでてくると、身体機能の低下を認めるようになります。そし

て、心不全の増悪、軽快を繰り返すと、筋力の低下や心肺機能の低下を認め、自立した生活ができなくなり、介護が必要な状態に陥る可能性があります。

 

逆に言えば、高血圧や糖尿病をしっかり治療を行っていれば、心不全は予防できる可能性が高くなるということです。

Screenshot 2025-08-13 at 19-41-20 2025年改訂版心不全診療ガイドライン - JCS2025_Kato.pdf.png2025年循環器学会心不全ガイドライン

 

 

 

心不全の予防はどうしたらいいですか?

 

まずひとつは、心臓病の予防を行うことです。それは肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧といった心臓病のリスクになる疾患に対して、運動をしたり、体重減量、禁

煙、減塩、節酒などのよい生活習慣を身に着けることが重要です。たとえ、心臓病になったとしても、その心臓病に対して、きちんと治療を行い、よい生活習慣を継続

し、お薬の治療も継続することが心不全の予防になります。

 

 

 

私たちが心不全の見つけるコツはありますか?

 

心不全は血液検査で疑いがあるのか知ることができます。採血の項目は、BNPあるいはNT-proBNPというものです。心不全が疑わしい場合にはこのBNPという数値が上昇し

ます。高血圧や糖尿病、腎臓病、脂質異常症のある方や、心臓の病気を言われている方で、「少し歩いただけで息切れがする」「重い荷物を持って歩けなくなった」な

ど、普通にできていたことが大変になったとか、「むくみ」がある場合には、是非かかりつけ医の先生に、BNPを測定してください!とお伝えください。

このBNPの数値が高い際には、循環器専門医による心不全の検査を行うことが、推奨されています。私は循環器専門医ですし、動悸・息切れ・足のむくみ外来を開設して

おりますので、是非ご相談ください。

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